日本ヒト脳機能マッピング学会

2015年7月2~3日に毎日新聞オーバルホールで開催されました第17回日本ヒト脳機能マッピ  ング学会に参加致しました.
本研究室からは,廣安知之教授,田中勇人(M1),村上晶穂(M1)の3名が参加しました.
発表した題目は以下の通りです.

・「照明環境が視覚探索時の脳活動に与える影響の検討」田中勇人,廣安知之
・「協調タッピング課題における脳活動の検討-他者モデルを有する機械系に対する人の脳活動の検討-」村上晶穂,後藤真櫻,横内久猛,廣安知之

私にとって初めての学会参加で,ポスター発表は緊張しましたが,研究室以外の方が自分の研究に興味を持って頂けたことがうれしかったです.
質問もいくつか頂けて有意義な時間を過ごすことができました.
また,研究に対する詰めの甘さを感じ,今後さらに研究を深めたいと思いました.abP1070219

最後に,リハーサルに参加してくださったり,アドバイスをくださった廣安先生
をはじめとする研究室の皆様にこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います.
ありがとうございました.

【文責:M1 村上】

学会参加報告書

報告者氏名 田中勇人
発表論文タイトル 照明環境が視覚探索時の脳活動に与える影響の検討
発表論文英タイトル
著者 田中勇人、廣安知之
主催 ヒト脳機能マッピング学会 運営委員
講演会名 第17回ヒト脳機能マッピング学会
会場 毎日新聞オーバルホール
開催日程 2015/07/02-2015/07/03

 

 

  1. 講演会の詳細

2015/07/02から2015/07/03にかけて、毎日新聞オーバルホールにて開催されました第17回ヒト脳機能マッピング学会に参加いたしました.この学会は、近畿大学 脳神経外科に所属されている加藤天美会長によって、脳機能解析手法の開発や機能的脳疾患の治療開拓の現況と今後の研究の方向性を発信することを目的に開催されました.

私は両日参加いたしました.他に村上さん、横内先生が参加されました.また,07/03のみ廣安先生が参加されました.

 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は2日の午後のポスター発表に参加いたしました. 5分の発表時間と1分の質疑応答時間となっておりました.

今回の発表は,以下に抄録を記載致します.

【背景】オフィスにおける執務者の知的生産性および快適性を向上させるための最適な照明環境が求められている.照明環境は作業効率、心理状態および生理的反応に影響を及ぼすが、快と感じる環境で作業効率が向上しない可能性も示されている. 

【目的】そこで、脳活動が作業効率に差異をもたらす要因であると考え、fNIRSを用いて照明環境と脳活動の関係を検討することを目的とする.今回は、必要な情報を早く認知するために必要な注意機能を測る視覚探索課題を用いる.我々の研究では2chのfNIRSを用いていたが、116ch使用可能な環境を構築し、実験を行う.

 

【方法】照明環境は、光色が赤(Red)、白(White)、青(Blue)の空間を設定する.被験者12名に対して、視覚探索時の脳血流変化量と心理状態を測定する.

【結果】課題成績は、3環境の探索時間で評価した.探索時間が早いほど、成績が高いとした.3環境での探索時間が遅い低成績群6名においては、視覚情報を記憶として保持する機能をもつ頭頂間溝付近の血流量が増加する結果となった.また、心理状態においても、Redでは、低成績群は有意に快の度合が高く、覚醒の度合が低い結果が得られた.

 

【考察】血流量が増加した部位の結果より、低成績群では、視覚情報を記憶することに集中し、視覚探索に対する注意が優位に機能しなかったと考えられる.また、Redでの心理状態が、注意機能を司る脳部位の血流変化量に影響した可能性が示された.

 

【結論】異なる照明環境下における視覚探索時の脳血流変化量を検討することにより、照明環境と脳活動の関係性が示唆された.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では、以下のような質疑を受けました.

 

・質問内容1

京都大学 医学部附属病院 精神科神経科所属の村井俊哉さんからの質問です.

こちらの質問は、「どのような照明で作業効率がどうなるかをまとめたものはあるのか」というものでした.この質問に対する私の回答は、「まとめたものはありません.先行研究などで、光色が青色の照明では作業効率が向上し、赤色の照明では作業効率が低下するという報告があります.しかし、心理状態においては、被験者によって様々であるという報告もあります.」です.

 

・質問内容2

京都大学 医学部研究科附属脳機能総合研究センター所属の福山秀直さんからの質問です.

こちらの質問は、「積分値は何を表しているのか」というものでした.この質問に対する私の回答は、「積分値は脳血流の増減具合を表していると考えております.積分値の正負により、血流が増加したか減少したかを評価しました.」です.

 

  • 感想

初めての学会でのポスター発表であり、とても緊張しました.しかし、質問も数問いただけて、非常に良い経験になりました.また、実際に医療現場で活躍されている医者の方が多かったので、普段あまり研究室では聴くことのできない発表を体感することができました.この経験を今後の研究室内発表や学会発表に活かしていきたいと思います.

 

 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.

 

発表タイトル       : 脳の可塑性をより誘発する学習法の解明著者                  : 細田 千尋、岡ノ谷 一夫、本田 学、花川 隆、大須 理英子

セッション名       : 一般口演 磁気計測・共鳴

 

Abstruct

脳の可塑性がより誘発される学習はまだ検討されていない.そこで、250回のタッピング課題を被験者81名に対して行った.高頻度に達成感を与える短期達成群では、運動前野に加えて前頭極の灰白質の体積が有意に発達し、側坐核・運動前野・前頭極・後部帯状回の機能的結合が有意に上昇していることがわかった.この結果より、高頻度の達成感により、報酬・情動系回路と目標達成の神経基盤である前頭極の機能的結合が強化されることが示された.

この発表では、まず被験者の数に驚かされました.研究内容もすごくわかりやすかったので、臨床よりの発表が多かった中で、結構印象強く、私の頭に残りました.MRIの解析方法に関してはわからないことも多かったですが、発表の仕方などいろいろ学べることもたくさんありました.

 

発表タイトル       : 運動学習効果促進を目的とした個人差評価の指標確率著者                  : 櫻田 武、平井 真洋、渡辺 英寿

セッション名       : ポスター発表

 

Abstruct

運動想起能力の評価は、質問紙を用いるため主観性が高い.そこで、客観性の高い 想起能力の個人差指標を確立するために、前頭前野の活動を計測した.質問紙により想起能力が高い被験者は、右背外側前頭前野におけるOxy-Hbの上昇が確認された.この結果より、背外側前頭前野は、認知機能と運動学習の促進効果を示す個人差指標に適している可能性が高いことが示された.

この発表では、私と同じくETG-7100を用いて、研究していることに興味を持ちました.発表後にfNIRSの解析方法に関して、お話をさせていただきました.この発表では、時系列データを標準化した後に、Oxy-Hb平均値を算出して検討されていました.自分の研究と近い分野であったこともあり、割と理解しやすい内容でした.

 

学会参加報告書

 

報告者氏名

 

村上晶穂

発表論文タイトル 学会参加報告書
発表論文英タイトル  
著者 村上晶穂, 後藤真櫻, 横内久猛,廣安知之
主催 ヒト脳機能マッピング学会 運営委員
講演会名 第17回ヒト脳機能マッピング学会
会場 毎日新聞オーバルホール
開催日程 2015/07/02-2015/07/03

 

 

  1. 講演会の詳細

2015/07/02から2015/07/03にかけて,毎日新聞オーバルホールにて開催されました第17回日本ヒト脳機能マッピング学会に参加致しました.この学会はヒト脳の機能局在や脳機能の解析方法から臨床応用まで幅広い知識の交流を目的にして設立された学会です。また,第17回では「脳の機能ネットワーク」というテーマで,この分野における現状と今後の研究の方向性を発信することを目的としています. 私は2,3日の両日参加致しました。本研究室からは私の他に田中勇人さんが参加しました.

 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は2日の午後のセッション「一般演題 ポスター発表1」に参加いたしました.発表の形式はポスター発表で,5分の説明時間と1分の質疑応答時間となっておりました.

今回の発表は,同期タッピング課題における脳活動の検討-他者モデルを有する機械系に対する人の脳活動の検討-という内容で行いました.以下に抄録を記載致します.

 

【背景】私たちは常に他者と関わりながら生活をしている.他者と円滑に物事を進める際には,協調性が必要である.

本研究では,人と人とが協調作業を行う際に,脳内でどのように相手の情報を処理し,自分の行動を決定しているのかの基礎的検討を行っている.

【目的】本稿では,機械に相手の心的モデルである「他者」モデルを持たせ,その機械と人とがインタラクションを行い検討することで,協調作業のメカニズムを検討する.

【方法】協調作業には人のタイミング機構が関連していると言われていることから,実験のタスクはタイミング機構の実験で古くから用いられている同期タッピング課題を行った.実験では,機械が他者モデルを持たないモデル(単純モデル)と機械が他者モデルを持つモデル(同期モデル)を用意した.これらの機械に対して人が協調作業を行い,fNIRS(functional near-infrared spectroscopy)を利用して脳活動を検討した.

【結果及び考察】協調度の高い被験者において両側頭部と前頭部に着目し,脳活動を検討した.その結果,同期モデルに対する場合には,単純モデルに対する場合と比較して,左下前頭回での賦活の傾向が観察された.左下前頭回は一時的な情報を保持すると言われている.同期モデルは機械も音提示間隔を被験者のタップ間隔に合わせるため,被験者が一方的に音提示間隔に合わせる単純モデルよりも相手の情報を必要とすることが考えられた.また,前頭極では,両モデルで賦活の傾向が見られなかった.前頭極は将来の予測を行い,被検者が自分の基準に基づいて意思決定をすることが求められる時に前頭極は賦活の傾向が見られないと言われている.そのため,協調度の高い場合は自分で合わせるという基準に基づいてタッピングを行っていたため,前頭極が賦活しなかったと考えられた.以上より,相手が同期モデルを持つことで,より相手の情報を必要とすることが示唆された.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.

 

・質問内容

岩手医大の石橋さんからの質問です.

・「どうしてこの課題なのか」

→タイミングと協調性には関連がある.また,課題である同期タッピング課題は昔からタイミングを合わせる時に使用されてきた課題であったため使用した.

・「何のt検定を用いているのか」

→ウェルチのt検定

 

また,横内先生から

パラメータは協調の指標にするのは難しいのではないか.

今の協調の指標がレスポンスの早さだけになっているから,協調の指標を考え直す必要がある.

というアドバイスを頂きました.

 

  • 感想

この学会は,お医者さんが多く,また初めての学会であったこともあり,緊張しました.

アドバイスや質問もいくついただき,有意義な90分を過ごすことができました.

その一方で研究に対して詰めの甘さも感じたので,今後の研究に役立てたいと思います.

NIRSの光と影というセッションでNIRSについて様々な議論がなされていたのが印象的でした.

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.

 

発表タイトル       : 脳の可塑性をより誘発する学習法の解明

著者                  :細田 千尋、岡ノ谷 一夫、本田 学、花川 隆、大須 理英子

セッション名       :一般口演 磁気計測・共鳴

Abstruct            :我々は,これまでに目標達成力の個人差の背景に,前頭極の脳構造の発達差があり,さらにこの領域は,目標達成経験によって可塑的に変化することを明らかにした.しかし,多くの目標達成者をだし脳の可塑的がより誘導される学習はまだ検討されていない.そこで,これらを明らかにするために,2群を対象とし,5週間指系列運動学習介入を実施した.短期達成群(n=41)は短い連続タッピングの成功でクリアという文字が表示され,長期達成群(n=40)は10以上の長い連続タッピングの成功でクリアの文字が表示されるプログラムを与えた.結果,短期達成群の脱落者は3名だったのに対し,長期達成群では23名だった.全被験者について,学習前後に脳構造,安静時脳機能結合MRIデータを取得した.全目標達成者で,学習前に比べて学習後には,運動前野近傍の拡散異方性があがっていた.また,短期達成群の目標達成者では,長期達成群に比べて,運動前野に加え,前頭極の灰白質の体積が有意に発達,側坐核・運動前野・前頭極・後部帯状回の機能的結合が有意に上昇,基底核―前頭極の連結強度が有意に発達していた.これらの結果から,高頻度に達成感を与えることで,学習達成者を増やすことができる.高頻度の達成感により,報酬・情動系回路と目標達成の神経基盤である前頭極の機能的結合が強化されることで脳の可塑性がより一層誘導され,目標達成行動が強化される可能性を示した.

この発表では,MRIで80名計測したという被験者の数の多さにまず驚かされました.

報酬をこまめに与えると脱落が減り,またそれが脳構造と関連しているという結果はとても

興味深かったです.

 

発表タイトル       :fNIRS計測における脳機能信号の実時間抽出・モニタリングの試み

著者                  : 山田亨,大橋三男,梅山伸二

セッション名       : 一般講演(ポスター)

Abstruct            : 近赤外脳機能計測信号は,頭部の各組織での光吸収・散乱変化の影響を受ける.その中でも頭皮層は脳灰白質層の約10倍の部分光路長を持つため,頭皮血流の変化がfNIRS信号に与える影響はきわめて深刻である.体動・姿勢変化,能動課題の遂行などによって頭皮血流状態がしばしば変化することは内外の研究者から数多く報告されている.これらを含む課題実験においては,脳機能信号を誤認とする危険を避けるため脳皮血流成分の除去が必須である.こうした状況の下で,計測中に実時間で脳機能信号の抽出を実行し,その波形をモニタリングできるfNIRS装置の実現が,臨床および研究現場から待望されていた.頭皮血流の影響を除去し,脳機能信号を抽出する計測技術,信号処理技術の研究は近年活発化し,現在,複数の手法が提案されている.しかし,それらの多くは計測が終わったデータから波形情報を取得する必要があるため,実時間モニタリングに直接適応することが困難である.その中で我々が提案したプローブ多重配置法と血流動態分離法は,実行に際して設定が必要なパラメータが少なく,かつ被験者間でその値の変動も小さい.また演算負荷も軽いため,実時間抽出・モニタリングに比較的適した手法といえる.そこで,我々はこれらの手法をソフトウェアに実装して全頭適応型fNIRS装置を用いて実時間での脳機能信号抽出とその波形モニタリングを試みた.

この発表では,fNIRSを使用する際の問題点の解決に貢献している内容でした.

計測後ではなく実時間でモニタリングできることや,血流動態分離法があれば,

観察したい脳機能信号がより明確に見ることができるところが良いと思いました.

 

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