The Human Brainnetome Atlas:接続構造に基づく新たな脳アトラス

The Human Brainnetome Atlas: A New Brain Atlas
Based on Connectional Architecture
Cereb Cortex, Vol.26, No.8, pp.3508-3526, 2016
20170621knakamura

脳の解剖学的構造と心理学,または認知機能とを関連付けるためのヒトの脳アトラスは,ex vivo である組織学
ベースのアトラスから,マルチモーダルかつin vivo であるデジタルなアトラスに移行しつつある.現在の多くの
ヒト脳アトラスは,特定の構造だけをカバーし,細かく分割することができず,また,機能的に重要な接続情報
を持たない.我々は,非侵襲的なマルチモーダル神経イメージング技術を使用して,人間の全脳をマッピングす
るコネクティビティベースの分割手法を設計し,in vivo でその接続構造を明らかにした.結果として得られたヒ
ト脳アトラスは,210 の皮質および36 の皮質下領域を有する.このアトラスは,交差検定されたものであり,解
剖学的および機能的接続の両方についての情報を含む.さらに,BrainMap データベースにより,認知機能をアト
ラスの詳細な構造にマッピングした.このアトラスは,構造,接続性,機能の複雑な関係を探求するための客観
的で安定した出発点を提供し,最終的に人間の脳の働きの理解を向上させる.このヒトのBrainnetome Atlas は,
http://atlas.brainnetome.org で自由にダウンロードでき,健常者および病理学的状態の研究に対し,脳全体の接
続,機能データを容易に利用することが可能である.

コネクティビティに基づく脳の分割

Connectivity-Based Brain Parcellation
Neuroinformatics, Vol.14, No.1, pp.83-97, 2016
20170529knakamura

関心のある脳構造を定義することは,脳のコネクティビティ分析における重要な手順である.脳構造における
接続パターンに関心を持つ研究者は,通常,接続解析の範囲を関連領域に限定するために,手作業で描写された
関心のボリュームまたは容易に利用可能なアトラスの領域を使用する.しかしながら,ほとんどの構造的脳アト
ラスおよび手作業で描写された関心ボリュームは,ボクセルの接続パターンを考慮しないので,解剖学的コネク
ティビティ分析には理想的ではない.本研究では,コネクティビティに基づいて脳を関心領域に分割する方法を
提案する.我々は接続ベースの分割を新しいマルチクラスホップフィールドネットワークアルゴリズムを用いて
グラフカット問題として近似的に解く.進行中の統合失調症の研究からの拡散テンソルイメージングデータを用
いて,このアプローチの適用を実証する.標準的な解剖学的アトラスと比較して,コネクティビティベースのア
トラスは,統合失調症を正常な被験者と区別する際により優れた分類性能をサポートする.正常および精神分
裂病の被験者で平均した接続パターンを比較すると,2 つのアトラス間の有意な体系的な違いが示唆された.

Connectivity-based parcellation,Probabilistic tractography,Graph-cut,Multi-class Hop eld network,Schizophrenia,Diffusion tensor imaging

幼児DTIMR 脳画像のセグメンテーションのためのアトラスベースのアプローチ

ATLAS BASED APPROACH FOR THE SEGMENTATION OF INFANT DTI MR BRAIN IMAGES
2014 IEEE 11th International Symposium on Biomedical Imaging,pp.1255 – 1258, 2014

本論文では,幼児拡散テンソル画像(DTI)からの脳組織(白質および灰白質)の自動セグメンテーションのための新しい適応アトラスベースの手法を提案する.脳画像および所望の領域マップ(脳、脳脊髄液など)は、独立した画像信号および相互依存領域ラベルのジョイントMarkov-Gibbs ランダム場(MGRF)モデルによってモデル化される.提案された共同MGRF モデルは,以下の3 つを説明する:非拡散(b0)スキャンに加えてDTIから推定された6 つのフィーチャの経験的分布を記述する1 次視覚的外観の3D 確率論的アトラス,および空間的に不変な2 次視覚的の3D 確率論的アトラス。推定された各DTI パラメータが独立していると仮定して,3D 確率論的アトラスは,正および負のガウス成分を含む離散ガウス(LCDG)強度モデルの以前に開発された線形結合を使用して正確に近似される.3D 確率論的アトラスは,3D 共整列トレーニングDTI 脳画像のサブセットを使用して学習される.2 次同次性記述子は,解析的に推定されたポテンシャルを用いて、領域ラベルの2 次変換および回転不変MGRF によってモデル化される.提案されたアプローチの精度を確認するために,Dice の類似性,Hausdorff の距離,および絶対的なボリュームの違いのメトリックによって,25 個のDTI 脳画像に関する我々のアプローチに対して5 つの手動で分割された3DDTI 脳画像とテストし,性能を評価した.

人間の大脳皮質におけるリッチクラブ組織のコストと利益に関与する構造的および機能的側面

Structural and Functional Aspects
Relating to Cost and Bene t of Rich Club Organization
in the Human Cerebral Cortex
Cerebral cortex, vol. 24, no. 9, pp. 2258-2267, 201420170212 mmizuno

最近の研究では,連結された脳領域の小さなセットが,皮質領域間の効率的な通信を可能にする中心的な役割を果たし,密接に相互接続された「リッチクラブ」を形成することが示されている.しかし,リッチクラブの密度と空間的レイアウトが脳構造の高価な特徴を構成することも示唆されている.そこで,解剖学的T1 拡散テンソルイメージング,磁気イメージング,およびfMRI を組み合わせて,いくつかの側面から脳のリッチクラブの構造的および機能的連結性を調べた.本研究において,リッチクラブ領域とリッチクラブの結合は,高い結合レベル,高い白質組織のレベル,高いレベルの代謝エネルギー使用,長い成熟軌道,より多様な領域の時系列変化,より多くの領域間の機能的結合を示唆する.つまり,これらの構造的かつ機能的な尺度から,リッチクラブ組織が,脳の資源に大きな負担をかける脳構造の高コストの特徴であることを示している.しかしながら,リッチ・クラブの高いコストは,リッチ・クラブが脳ネットワーク全体に与える重要な機能的利益によって相殺されるのかもしれない.

自閉症患者における機能的・構造的脳内ネットワーク組織の変化

Altered functional and structural brain network organization in autism
NeuroImage: Clinical, Vol. 2, pp.79–94, 2013
20151006sobuchi

構造的と機能的のアンダーコネクティビティは自閉症患者の多数の脳領域,機能的システム,そして白質路において報告されてきた.近年の複雑ネットワーク解析の発展は脳がスモールワールド性を示すモジュラーネットワークであることを明らかにしたにもかかわらず,自閉症患者のネットワークレベルの組織は詳細に調査されてはいない.本稿では,児童と青年の自閉症患者が,機能的システムにおける短く幅広いコネクティビティの減少とディフォルトと高次視覚領域における機能的システム間の強いコネクティビティを示すため,レスティングステイトfMRIを用いた(n=42自閉症児,n=37健常児).グラフ理論を用いて,機能的コネクティビティにおけるグループの違いが,モジュラリティとクラスタリングにおいて,ネットワークレベルの減少として反映されていたが,キャラスタリスティックパスレングスにはそれがみられないことを示した.拡散テンソルMRIによって得られた線維束の構造的ネットワークは,白質形態の統合性は低いが,線維本数が多いことを示した(n=51自閉症児,n=43健常児).健常児と自閉症児の各人は構造的・機能的コネクティビティの関係において類似性がみられた(n=35自閉症児,n=35健常児).しかしながら,構造的と機能的ネットワークを統合する主成分分析では,構造的と機能的ネットワーク間のロカール・グローバルエフィシエンシーのバランスは自閉症児にのみ低下していることが明らかにされた.それらは年齢に正の相関があり,自閉症の症状に負の相関があった.まとめると,我々の発見は複雑ネットワークとした脳モデルは自閉症と他の神経精神学の障害の解明されていない生物学的基礎において非常に有益なものとなることが示唆された.

ベイズテンソルを用いた正規化による線維追跡の改善

Improved ber tractography with Bayesian tensor regularization
Neuroimage, Vol. 31, No. 3, pp. 1061-1074, 2006.

拡散テンソルにおける線維追跡手法は,ノイズやパーシャルボリュームアベレージ(partial volume averaging: PVA) における影響を受ける.線維の経路を正確に復元するために,トラッキングのアルゴリズムがアーチファトに強固であることが求められる.この必要条件を満たすために,本研究では,ノイズやPVA の影響を考慮し,トラッキングの正確性と精密性を向上させる,ベイズ理論による正規化を組み込んだ新規手法を確立する.この枠組みによって,次の線維の経路はベイズ理論によって最適のベクトルが決定され伝播する.複雑な確率関数で最適解を最大事後確率によって解析的に導出することができ,拡散テンソル要素の多変量正規分布に基づいてモデル化される.確率関数のためのパラメータはテンソル要素の不確実性や異方性比率(FA)によって加重されたサンプリングボリュームの指向範囲によるテンソル中の分散によって推定される.人間の生体内の拡散テンソルデータや人工的に造られたデータ,モンテカルロシミュレーションを用いた実験において,この特殊な方法がファイバートラッキングのノイズやPVA に対する雑音耐性を増加させ,線維をより忠実に再現できることを証明した.

20150714_iishida

人間の大脳皮質におけるリッチクラブ組織のコストとベネフィットに関する構造的・機能的な側面

20150407sobuchi

Structural and Functional Aspects Relating to Cost and
Bene t of Rich Club Organization in the Human
Cerebral Cortex

Guusje Collin, Olaf Sporns, Rene C.W. Mandl, and Martijn P. van den Heuvel
Cerebral Cortex, vol.24, pp.2258–2267, 2014

近年の調査結果によると,高度に結合された脳領域の組み合わせは皮質領域間の効率的な伝達を可能にする役
割を担う可能性があることを示している.そして,ともになって密な相互接続である「リッチクラブ」を形成す
る.しかしながら,リッチクラブの密度や空間的配置はまた脳構造のコストの高い特徴を構成することを示唆し
ている.本稿では,構造的T1,拡散テンソル画像法,magnetic transfer imaging,そして機能的磁気共鳴画像法
を結合し,脳のリッチクラブに関する構造的・機能的コネクティビティのいくつかの側面を検討した.結果,リッ
チクラブ領域とリッチクラブな結合は高度なワイヤリング構造,高度な白質形態,多くの代謝エナジーの利用,長
い成熟した神経線維,より多くの価値のある領域的時系列,そしてより多くの領域内機能的カップリングを示す.
まとめると,これらの構造的・機能的測定は脳のリソースに対して,大きな負担を与える脳構造のコストの高い
特徴を示すというリッチクラブ組織の概念をひろげる.しかしながら,リッチクラブの大きなコストは全脳のネッ
トワークにも寄与するリッチクラブの重要な機能的なベネフィットによって補われる.

ASD とADHD 患者の構造的・機能的コネクティビティ:リッチクラブ組織研究

pdf

Structural and Functional Connectivity of the Human
Brain in Autism Spectrum Disorders and
Attention-De cit/Hyperactivity Disorder:
A Rich Club-Organization Study

Human Brain Mapping, vol.35, pp.6032-6048, 2014

ADHD とASD は児童の中で最も一般的で難解な神経発達障害である.この2 つの障害は多くの行動的そして
神経生理学的な特徴を共有しているが,多くのMRI 研究は同時に両方の障害を検討はしていない.構造的と機能
的コネクティビティを統合させるグラフ理論を用いて,3 つの児童のグループ(ADHD (8–12 歳,n = 20),ASD
(7–13 歳,n = 16),統制(8–12 歳,n = 20))のラージスケールネットワーク組織を検討した.密に結合された
ハブ領域は自身もまた密に結合されているリッチクラブ組織の概念を適用する.そして脳を2 つの異なるネット
ワークドメインに分け検討する.(1) リッチクラブネットワーク現象内と(2) リッチクラブネットワーク現象外で
ある.ASD とADHD グループは機能的・構造的データ共に,リッチクラブとノンリッチクラブ結合のパターンが
明らかに異なる.ASD グループはリッチクラブネットワーク内の構造的・機能的ネットワークにおいてのみ強い
コネクティビティを示した.これらの結果はASD (n = 85) と統制(n = 101) の自閉症の脳イメージングデータ
によって再現された.ADHD グループはリッチクラブネットワーク内において弱い一般的な拡散異方性と機能的
コネクティビティ示したが,リッチクラブ外での神経繊維本数と相関係数は高かった.いくつかの生態学的特徴
や頻繁におこる合併症は共通であるが,これらのデータはADHD とASD 児はラージスケールコネクティビティ
のパターンが明らかに異なることを示している.

DTI とfMRI の統合解析による前頭–頭頂ネットワークにおける白質・灰白質の結合の解明

Combined analysis of DTI and fMRI data reveals a joint maturation of white and grey matter in a fronto-parietal network

本研究の目的は白質の成熟がみられる領野のネットワークがあるか,そして脳活動変化が幼少期における発達傾向と同様の類似性がみられるかの検討である.先行研究では,我々は幼少期に前頭ー頭頂領域における灰白質の脳活動が増加することを示した.我々はこれが白質の成熟によるものであると仮定した.8?18歳の23人の健常な子どもを対象に調査した.ワーキングメモリ課題を行っている間の脳活動をfMRIのBOLD効果を用いて計測した.神経線維はDTIを用いて計測された.DTIデータを基に,我々は髄鞘化と軸索の太さの指標であるFAを算出した.MRIスキャンの前に.ワーキングメモリのスコアを評価した.いくつかの領域において,ワーキングメモリスコアはFA値とBOLD信号のそれぞれに関連していた.FA値とBOLD信号は個々の被験者のそれらの領域のピークボクセルから抽出された.FA値はFA値とBOLD信号とが関連のある脳領域をみつけるために行う,BOLD信号解析に共変量として用いられた.逆に,BOLD信号値はFA値解析のための共変量として用いられた.いくつかの皮質や皮質下において,白質の成熟と脳活動の増加に正の相関があった.特に,我々の仮定を支持する,ワーキングメモリの機能を担うとされている,頭頂溝と下頭頂小葉の灰白質付近に位置するBOLD信号と前頭?頭頂間の白質におけるFA値には正の相関が発見された.

pdf

複雑脳ネットワーク:構造的・機能的システムのグラフ理論解析

Complex brain networks: graph theoretical analysis of structural and functional systems

グラフ理論を基盤とする定量的複雑ネットワーク解析の発展は脳内ネットワークに応用されている.脳の構造的・機能的システムは人間のニューロイメージングの全脳スケールや動物の細胞スケールにおいて,スモールワールド性(ハブとモジュラリティが高度に結合する)のような複雑なネットワークの特徴をもつ.本稿では,様々なモダリティ(sMRIやfMRI,DTI,そしてEEG)における複雑脳ネットワークの研究をレビューし,グラフ理論の基礎原理のイントロを紹介する.また,我々はいくつかの技術的挑戦と将来生じるであろう問題を取り上げる.

pdf