協力時の母子ダイアドにおける脳間同期:fNIRSのhyperscanning研究

Inter-brain synchrony in mother-child dyads during cooperation: An fNIRS hyperscanning study
J.G. Miller, P. Vrti{\v{c}}ka, X. Cui, S. Shrestha, S.H. Hosseini, J.M. Baker and A.L. Reiss
Neuropsychologia, vol. 124, pp. 117-124, 2019.

個人間の協調的な脳活動,つまり脳間同期は,協力時に増加し,協力の成功と相関することが示されている.しかし,親子間の脳間同期と,それが親子関係の意味ある側面と関連しているかどうかを調査した研究はほとんどない.ここで,我々は母子ダイアドが協力的な課題と独立した課題に従事している間の彼らの右前頭前皮質(PFC)と側頭皮質における脳間同期を測定した.我々は母子ダイアドの脳間同期が,(1)協力時に増加するか,(2)母-息子ダイアドと母-娘ダイアドで異なるか,(3)協力行動と愛着関係に関連するかどうかを調べた.右半球,とりわけPFCの右背側部および前頭極における脳間同期が全体的に協力時により高かった.母-息子ダイアドは母-娘ダイアドと比較して,独立した課題時により低い脳間同期を示し,協力に応じて同期性が強く増加を示した.最後に,我々は脳間同期と子供の愛着の間の関連について強力な証拠を見つけられなかった.母-息子ダイアドと母-娘ダイアドでは異なるが,母子協力により脳間同期は全体的に増加する可能性がある.母子協力における全体的な脳間同期の潜在的な役割,および脳間同期と愛着との間の潜在的な関連をよりよく理解するためにはさらなる研究が必要である.

fNIRSに基づいたハイパースキャニングにより明らかにされた親子の脳と脳の同期と感情調節との関係

Brain-to-brain synchrony in parent-child dyads and the relationship with emotion regulation revealed by fNIRS-based hyperscanning
V. Reindl, C. Gerloff, W. Scharke and K. Konrad NeuroImage, pp.493-502, 2018.

親子の同期は,ここでは社会的接触時の親子の行動と生物学的信号の結合をさすが,感情的な結びつきの形成と関連のある子供の脳回路と感情制御の発達を微調整する可能性がある.ここでは,我々は,機能的近赤外分光法によるハイパースキャニングを用いて親と子供の前頭前野の神経活動を測定することにより,これらの過程の神経生物学的基盤を調査した.それぞれの子供は協力的なゲームと競争的なゲームの両方を見知らぬ大人だけでなく親,主に母親と行った.協力時に親と子供の脳活動は背外側前頭前皮質で同期し,これはその後の試行での協調性を予測するものであった.親子の競争,他人と子供の協力,他人と子供の競争の条件では,有意な脳と脳の同期はみられなかった.さらに,前頭前皮質における協力時の他人と子供の脳と脳の同期と比較すると,親子の脳と脳の同期はアンケートで評価される親と子供の感情制御の間に関連を仲介した.したがって,我々は脳と脳の同期は,子供の適応的な感情制御の発達に関連する,親子の間の感情的なつながりの基本的な神経メカニズムを表している可能性があると結論づける.将来の研究では脳と脳の同期が,危険な状況に敏感である,二者間の社会的感情の相互作用の神経生物学的マーカーとして役立ち,介入により修正されうるかどうかを明らかにする可能性がある.

自発的な欺瞞における性別による違い:fNIRSを用いたハイパースキャニング研究

Gender difference in spontaneous deception: A hyperscanning study using functional near-infrared spectroscopy
Zhang, M., Liu, T., Pelowski, M., Yu, D.
Scientific Reports,vol. 7, no. 1, pp.7508, 2017
20171115 mmizuno

これまでの研究では,欺瞞の神経基盤は medial frontal cortex (MFC), superior temporal sulcus (STS), temporo-parietal junction (TPJ)などの領域のネットワーク関与していることが実証されている.しかし,既存の研究では主に受動的な欺瞞のパラダイム使用しており,被験者はある条件に陥るように指示されている.また,一人の被験者の脳内メカニズムに焦点が当てられている.本研究では,実際の社会的相互作用におけるより自然な欺瞞の神経基盤を調査するため,functional near-infrared spectroscopy (fNIRS)によるハイパースキャンニング技術を用いて,2人のギャンブルトランプゲームにおける参加者の前頭部-側頭部の脳活動を計測した.我々は,正直な行動時と比較して,不正行為時においてTPJの活性が大きいことを示した.さらに,被験者間の脳内相関関係の分析の結果から,特に女性においてSTSは正直な行為ではなく欺瞞に関与していることを明らかにした.これらの結果は,STSが自発的な欺瞞時において相手の思考を調整することに関連するメンタライジングに重要な役割を果たしている可能性を示唆している.我々の知る限りでは,この研究は初めて実際の対面相互作用における欺瞞の脳内相関を調査したものである.したがって,複雑な社会行動研究の新たな方法を提供していると期待している.