脳内ネットワークのグループを比較するための順列検定フレームワーク

A permutation testing framework to compare groups of brain networks
frontiers in Computational Neuroscience, Vol.7, 171, 2013
20170220 rhagiwara

脳内ネットワーク解析は,過去10年間の神経イメージング研究の最前線に移行した.しかしながら,ネットワー クのグループを統計的に比較する方法は遅れている.これらの比較は,複雑な脳機能のさらなる洞察を得ること, および異なる精神状態や疾患状態にわたってどのように変化するかについてに関心のある研究者に大きな魅力を もたらす.現在の比較アプローチは,ネットワーク固有のとぽトポロジー特性を無視した要約した指標または質量 一変量のノードやエッジベースの比較に依存し,わずかな特徴しか得られず,ネットワークレベルの比較ができな い.複雑な脳機能の正常および異常の変化についてより深い洞察を集めることは,脳内ネットワーク全体に存在 する豊富なデータを利用する方法を必要とする.ここで,個々のネットワークに固有のトポロジカルな機能を組 み込んだネットワークのグループを比較できる順列検定のフレームを提案する.我々はグループの違いが既知の シミュレートされたデータを使用してアプローチを検証する.次に,この方法を fMRI データから得られる機能的 脳内ネットワークに適用する

関心領域間の機能的コネクティビティおよび構造的共分散は多変量距離相関を用いてより正確に測定すること ができる

Functional connectivity and structural covariance between regions of interest can be measured more accurately using multivariate distance correlation
NeuroImage, Vol.135, No., 16–31, 2016
20170117 rhagiwara

脳全体の機能的コネクティビティまたは構造共分散の研究は,典型的にピアソン相関係数のようなものを使用 し,関心領域(ROI)内のボクセルにわたって平均化されたデータに適用される.しかし,例えば機能的コネク ティビティまたは構造的共分散の異なるパターンを示すサブ領域を含む ROI 内に不均一性が存在する場合,ボク セル間の平均化は偏ったコネクティビティ推定値になる可能性がある.ここで,距離相関に基づく新しい尺度を提 案する.それは,線形および非線形依存性の両方を可能にする高次元ベクトルの多変量依存性の考査である.不均 一な ROI にもかかわらず,距離相関がピアソン相関をどのように優れているかを示すためにシミュレーションを 使用した.実際のデータでこの新しい指標を評価するために,ケンブリッジ老化神経科学センター(Cam-CAN) プロジェクトの 214 名の参加者の2セッションからのレスティングステイト fMRI スキャンと T1 構造スキャンを 使用する.ピアソン相関および距離相関は,機能的コネクティビティおよび構造共分散の両方に関して,同様の平 均コネクティビティパターンを示した.それにもかかわらず,距離相関は,1) セッション間でより信頼性があり, 2) 参加者間でより類似しており,3)ROI の異なるセットに対してより確かであることが示された.さらに,機能 的コネクティビティと構造共分散推定値との間の類似性が,ピアソン相関と比較して距離相関についてより高い ことを見出した.また,様々な前処理オプションとモーションアーチファクトが機能的コネクティビティに及ぼす 相対的な影響についても調査した.距離相関は実装が簡単であり計算が速いため,機能的および構造的データの ROI に基づく脳全体のコネクティビティパターンを調べるために,ピアソン相関の期待できる代替案である.

閾値による脳機能ネットワーク計測の安定性と不安定性

The (in)stability of functional brain network measures across thresholds
NeuroImage, Vol.118, 651-661, 2015
2016 rhagiwara

脳の大規模な組織は,グラフ理論からネットワーク測定を用いて定量化することができる複雑ネットワークの特 徴を有する.しかし,多くのネットワーク測定はバイナリグラフで計算されるように設計されるのに対して,脳 機能の組織は一般的に脳領域間の時間的信号における相関の連続的な測定値から推測される.閾値処理は機能的 コネクティビティデータから得られるバイナリグラフを使用するために必要な手段である.しかしながら,そこ にどのような閾値を使用するかに関して現在の一致した意見はなく,ネットワーク測定やグループのコントラス トは閾値によって不安定になることがある.それにもかかわらず,全脳ネットワーク解析は任意の閾値あるいは閾 値範囲における一般的に報告された結果で広く適用されている.本研究では,大規模なレスティングステイトコ ネクティビティデータセットにおける閾値によるネットワーク測定の安定性の評価に努めた.ネットワーク測定 は絶対閾値(相関ベース)と比率閾値(スパーシティベース)で評価され,性別と年齢のグループ間で比較した. 全体として,ネットワーク測定は絶対閾値において不安的であることがわかった.例えば,特定のネットワーク 測定におけるグループ差の傾向は閾値に依存して変化する.ネットワーク測定は,比率の閾値によってより安定 であることがわかった.これらの結果は,機能的コネクティビティデータに閾値を適用した際や,バイナリグラ フモデルから結果を解釈する際に,注意を払う必要があることを示している.

安静状態の機能的コネクティビティにおける定量的な比較:fNIRS と fMRI の同時計測研究

Quantitative comparison of resting-state functional connectivity derived from fNIRS and fMRI: a simultaneous recording study
NeuroImage, vol.60, issue 4, pp. 2008-2018, 2012
20160720 htanaka

安静状態の機能的コネクティビティ (RSFC) を fNIRS で評価できる可能性は,すでに実証されている.しかし, fNIRS による RSFC 評価の妥当性においては,ほとんど研究されていない.本研究では,21 名の被験者から安静 状態時の fNIRS と fMRI データを同時に取得した.fMRI データを fNIRS 測定空間に変換することで,空間的な 位置合わせが二つのモダリティ間でなされた.その後に,RSFCにおけるモダリティ間の類似性 (BMS)の指標が, 複数の空間スケールで評価された.まず,左右の一次運動野 (ROI) における RSFC が,fNIRS と fMRI 間で全被 験者とも類似していた (HbO : BMS (ROI) = 0.95 ± 0.04,HbR : BMS (ROI) = 0.86 ± 0.13).次に,体性感 覚野での RSFC においては,グループ水準の方 (HbO : 0.79,HbR : 0.74) が個人の被験者の水準 (HbO : 0.48 ± 0.16,HbR : 0.41 ± 0.15) よりもモダリティ間で高い類似性をもつことが示された.そして,我々は安静状態時の 脳内ネットワークにおける幾何学特性を調査するために,fNIRS データとグラフ理論を初めて組み合わせた.最 も重要なパラメータであるクラスター係数 (C(p)) と固有パス長 (L(p)) は,モダリティ間で高い類似性を示した (BMS(Cp) = 0.90 ± 0.03 (HbO),0.90 ± 0.06 (HbR) ; BMS(Lp) = 0.92 ± 0.04 (HbO),0.91 ± 0.05 (HbR)). つまり,全ての空間スケールにおける結果は,fNIRS が fMRI に匹敵する RSFC 評価を行うことが可能であるこ とを実証し,安静状態における脳機能統合における脳内コネクティビティおよび脳内ネットワーク手法の有効性 に対して,直接的な根拠を示す.

ワーキングメモリ,感情処理及びレスティングステイト中の fMRI に基づくグラフ理論的性質の試験・再試験信 頼性

Test-retest reliability of fMRI-based graph theoretical properties during working memory, emotion processing, and resting state
NeuroImage, Vol.84,888–900, 2014

機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)とグラフ理論解析を用いた脳コネクトームの研究が最近人気を得ているが, 特にアクティブ fMRI タスク由来のロバスト性についてはほとんど知られていない.そこで,3 つの確立された fMRI 実験(n-back ワーキングメモリ,感情的な顔照合,レスティングステイト)における 26 名の健康な参加者 から計算された脳のグラフにおける試験・再試験信頼性を研究し,ノード定義(AAL アトラス,Power らによる 機能的アトラス)の 2 つの分割案を提案した.5 つの異なるデータ処理方法のクラス内相関係数(ICCs)を比較 し,状態固有の回帰子であるタスク回帰の優れた信頼性を実証した.タスク間の比較は,アクティブなタスクと相 対的にレスティングステイトが有意に高い ICCs と全体的および局所的なネットワーク特性の顔照合タスクと相対 的な n-back タスクが有意なことを明らかにした.平均 ICCs は一般的にアクティブタスクで低い一方,全体的な 公正な良好な信頼性は全体的および局所的コネクティビティ特性と,両アトラスとスモールワールド性が検出さ れた.すべての 3 つのタスクおよびアトラスにおいて,低い平均 ICCs は局所的なネットワーク特性がみられた. しかし,ノード特有の良い信頼度は,検証された機能(レスティングステイト:デフォルトモードネットワーク のノード,n-back:前頭-頭頂のノード,顔照合:辺縁系のノード)において重要だと知られている領域における ノードの degree 検出した.アトラス間の比較は,全体的および局所的なネットワーク特性における機能的分割の 信頼性が有意に高いことが実証された.結果は,アクティブタスクを使用した fMRI 研究における処理方法,脳ア トラスや結果特性の選択やグラフ理論方法や特に将来の薬理的 fMRI 研究における被験者間のデザインを知らせる ことが可能となる

機能的ネットワークのモジュラリティによる個人間と個人内のワーキングメモリ容量の変動の予測

Functional Brain Network Modularity Captures Inter- and Intra- Individual Variation in Working Memory Capacity
PLoS ONE, Vol.7, No.1, e30468
20151029sobuchi

背景:ワーキングメモリのような認知機能は人によって異なる.しかしながら,個々の認知パフォーマンスも日によって変化する.認知可変性の一つの原因は神経システムの機能的組織における変動かもしれない.最適化された機能的ネットワークの組織の度合いは,個々の効果的な認知機能に関連している可能性がある.本論文では,レスティングステイトfMRIによって計測されたラージスケールネットワークの組織がどのように変化するか,そしてグラフ理論追跡はワーキングメモリ容量を変化するのかを検討する.
手法と結果:22名の被験者はワーキングメモリ容量を計測し,レスティングステイトfMRIを行った.17名は同じ実験を3週間後に行った.34の脳領域においてネットワーク組織を計測するため,グラフ理論を用いた.サブネットワークの統合性と分離性の度合いを示すネットワークモジュラリティとネットワーク結合の効率性を示すスモールワールド性は,個人の記憶容量の違いを予測した.しかしながら,モジュラリティのみ2セッション間の個人内の変動を予測した.セッション間で安定しているワーキングメモリのコンポーネントを制御する偏相関係数分析は,モジュラリティが各セッションのワーキングメモリの変動性とよく関連していたことを明らかにした.特定のサブネットワークと個人の回路の解析は,ワーキングメモリの変動性を明確に説明することはできなかった.
結論:レストで計測された認知制御ネットワークとして定義された機能的組織は,実際の認知パフォーマンスについての情報を反映していることを結果は示している.個人のワーキングメモリ容量の変動性に対するネットワークモジュラリティの関連性は,信号の調整あるいはノイズ伝達の抑制を通して,モジュール内の高い結合とモジュール間の疎な結合が脳領域間の効果的な信号伝達を反映する可能性があることを示している.

自閉症患者における機能的・構造的脳内ネットワーク組織の変化

Altered functional and structural brain network organization in autism
NeuroImage: Clinical, Vol. 2, pp.79–94, 2013
20151006sobuchi

構造的と機能的のアンダーコネクティビティは自閉症患者の多数の脳領域,機能的システム,そして白質路において報告されてきた.近年の複雑ネットワーク解析の発展は脳がスモールワールド性を示すモジュラーネットワークであることを明らかにしたにもかかわらず,自閉症患者のネットワークレベルの組織は詳細に調査されてはいない.本稿では,児童と青年の自閉症患者が,機能的システムにおける短く幅広いコネクティビティの減少とディフォルトと高次視覚領域における機能的システム間の強いコネクティビティを示すため,レスティングステイトfMRIを用いた(n=42自閉症児,n=37健常児).グラフ理論を用いて,機能的コネクティビティにおけるグループの違いが,モジュラリティとクラスタリングにおいて,ネットワークレベルの減少として反映されていたが,キャラスタリスティックパスレングスにはそれがみられないことを示した.拡散テンソルMRIによって得られた線維束の構造的ネットワークは,白質形態の統合性は低いが,線維本数が多いことを示した(n=51自閉症児,n=43健常児).健常児と自閉症児の各人は構造的・機能的コネクティビティの関係において類似性がみられた(n=35自閉症児,n=35健常児).しかしながら,構造的と機能的ネットワークを統合する主成分分析では,構造的と機能的ネットワーク間のロカール・グローバルエフィシエンシーのバランスは自閉症児にのみ低下していることが明らかにされた.それらは年齢に正の相関があり,自閉症の症状に負の相関があった.まとめると,我々の発見は複雑ネットワークとした脳モデルは自閉症と他の神経精神学の障害の解明されていない生物学的基礎において非常に有益なものとなることが示唆された.

注意欠陥/多動性障害における機能およびコネクトームのイメージング

Imaging Functional and Structural Brain Connectomics
in Attention-De cit/Hyperactivity Disorder

Cao, Miao and Shu, Ni and Cao, Qingjiu and Wang, Yufeng and He, Yong

Molecular neurobiology, 2014, vol.50, no.3, p.1111-1123.

注意欠陥/多動性障害(ADHD)は,小児期の最も一般的な神経発達障害の一つである.臨床的に,この障害の
中核症状は不注意,多動,衝動性が含まれる.以前の研究では,ADHD の子供において,これらの障害は脳の領
域の異常だけでなく,領域間で機能的および構造的つながりの変更にも関連されるということが報告されている.
過去数年間では,グラフ理論的なアプローチと結合して非侵襲性の神経生理学的および神経画像処理技術(例え
ば、脳波計、機能的なMRI と拡散MRI)を用いた大規模な脳のネットワーク(コネクトーム)の位相的な変更
をマッピングすることによって,ADHD がどのように脳の連結性に影響を及ぼすかという研究がおおいに進めら
れた. 本報告では、我々は大規模な脳のシステムのグラフィック分析に焦点を当て、ADHD における機能的およ
び構造的なコネクトームの最近の進歩をまとめる.収束の証拠は,ADHD の子どもたちが規則的な構成に向けて,
ネットワークトポロジーの障害関連のシフトを示唆して,より高いクラスタ形成と低いグローバル整合性によっ
て特徴づけ,機能的および構造的脳ネットワークの両方で異常なスモールワールド特性を有していたことが示唆
された.さらに、ADHD の子供たちは,デフォルト・モード,注意と感覚運動システムを含んでいる領域のノー
ドと連結性の再分配を示した.重要なことに,これらのADHD 関連の変化は,かなり行動障害(例えば、不注意
と多動/衝動性の徴候)と相関して,臨床サブタイプの間で他と異なるパターンを示した.これらのコネクトーム
ベースの研究は,ADHD で脳のネットワーク機能障害を強調する.したがって,我々がこの障害の病態生理学的
機序を理解することに新しいウインドウを開ける.これらの研究には,ADHD で臨床診断と処置評価のためにも
イメージング・ベースのバイオマーカーの発展に関して,重要な部分があるかもしれないと考えられる.

複雑なブレインネットワークの構造と機能

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Structure and function of complex brain networks
Dialogues in clinical neuroscience, vol.15, no.3, pp.247-262, 2013
増加している理論的で実験的な研究はネットワークの観点から脳の機能の解明に近づいている.ブレインネット
ワークの解析は新たなイメージング手法や,グラフ理論とダイナミックシステムからなる新たなツールの発展に
よって可能となった.本総説ではこれらの理論的進展のいくつかを概観し,構造的・機能的ブレインネットワーク
の構成に関する最近の知見を要約する.構造的コネクトームの研究はいくつかのモジュールあるいはモジュール
間の伝達処理を仲介するハブ領域によって連結されたネットワークコミュニティを明らかにする.近年のネット
ワーク解析はネットワークハブが収集し,分散するシグナル伝達のために中心的に位置されたリッチクラブとよ
ばれる密に結合された集合体を形成することを示している.レスティングとタスクによる神経活動の記録は,明
確な認知領域における機能に寄与するレスティングステイトのネットワークが明らかにされてきている.ネット
ワーク手法は臨床環境においてさらに適用され,脳と精神障害の神経基盤の解明について議論されている.

大脳皮質のネットワーク構造による多くの時間尺度による機能的結合への影響

Network structure of cerebral cortex shapes functional connectivity on multiple time scales
PNAS Volume 104, 2007, pp10240-10245

大脳皮質により展開されるニューロナルダイナミクスは外部入力がない場合においても,複雑な空間的・時間的パターンを示す.本稿では,我々は構造的結合の基礎となる自発的な皮質のダイナミクスのこれらの特徴を関連づけるための数学的手法を用いる.マカクの新皮質の領域間の結合をとらえるネットワークにおける,非線形ニューロナルダイナミクスの模擬実験や機能的結合を特定するための理論的に計測された情報を用いることによって,我々は多くの時間スケールにおいて構造的・機能的結合の関係を発見した.数分間の神経活動の大きな窓によって取り出される機能的ネットワークは基礎の構造的ネットワークと共通している.結果として,これらの長期にわたる機能的ネットワークのハブは構造的ハブに対応する.一方で,機能的トポロジーの重大な変動は連続した小さな窓によって取り出されるネットワークの順序によって観察される.個々のノードの機能的中心性は領域間の結合移動による時間により異なる.さらに,脳領域間の一時的な結合は二つの相関しないクラスターの存在を示す手法によって調整される.これらのクラスターは基本的な構造的ネットワークにおいてハブノードである,前頭前野と頭頂領域によって結合される.さらに速い時間スケールにおいて,我々は領域間のフェイズロッキングの個々のエピソードを検知し,これらの一時的なエピソードの統計量における遅い変動が機能的結合のトランスファーエントロピーと遅いタイムスケールによって観察されたBOLDの関連パターンを発見した.

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