応援がプレイヤーと観察者の感覚運動野間の脳間同期を向上する

Cheering Enhances Inter-Brain Synchronization Between Sensorimotor Areas of Player and Observer
T. Koide and S. Shimada Japanese Psychological Research, vol. 60, no. 4, pp. 265-275, 2018.

他の人を応援することは一般的な経験である.応援は,応援される人と応援者の主観的な団結を促進する可能 性があり,潜在的に 2 人の個人の脳間同期した活動を伴う.現在の研究では,機能的近赤外分光法を使用して,競 争的なゲーム時におけるプレイヤーと観察者の運動感覚野の活動を同時に計測した.プレイヤーは実験者とじゃ んけんを行い,観察者はそのプレイヤーを応援するか(応援グループ),プレイヤーが不正行為をしたかどうかを 判断した(コントロールグループ).応援グループでは,コントロールグループと比較して,観察者はプレイヤー との一体感が有意に強く,プレイヤーの勝利を観察する際により大きな運動感覚野の活性化を示した.プレイヤー と観察者の感覚運動野間の機能的結合は応援グループで有意に大きく,プレイヤーと観察者間の主観的な一体感 と有意な相関を示した.これらの結果は,応援がプレイヤーと観察者の内部状態の同期を強化し,一体感を確立 することを示唆する.

我々はいつ他者と神経同期に陥るのか

When do we fall in neural synchrony with others?
K. Lu and N. Hao
Social cognitive and affective neuroscience, vol. 14, no. 3, pp. 253-261, 2019.

この研究は,対人間の脳の同期(IBS)が共同作業中に発生する状況を調査することを目的とし,新規の機能的近赤外分光法(fNIRS)ベースのハイパースキャニングパラダイムを開発することによりその軌跡を経時的に検証した.参加者は,メンバーの2人が実際の参加者で,1人は共謀者である3人のグループで共同作業をするように指示された.実際の参加者と共謀者の2者間と比較して,実際の参加者の組み合わせでは,より良い協力行動と両側の背外側前頭前野間のIBSが示された.また,IBSと協力は,実際の参加者の組み合わせでは時間の経過とともに増加した一方で,共謀者との2者間では低く一定のままであった.これらの知見は,IBSが共同作業中に対人相互作用に従事している個人間で発生し,その間にIBSと協調的な対人相互作用が時間とともに増加する傾向があることを示している.

機能的近赤外分光法(fNIRS)における信号処理: 方法論的差異は異なる統計的結果をもたらす

Imaging Brain Function with Functional Near-Infrared Spectroscopy in Unconstrained Environments
J.B.Balardin, G.A.Zimeo Morais, R.A.Furucho, L.Trambaiolli, P.Vanzella, C.Biazoli Jr and J.R.Sato Frontiers in human neuroscience, vol.11, p.258, 2017

自然な実験下で運動と認知プロセスの神経相関を評価することは, 伝統的な脳イメージング技術の動きに制約があるため挑戦的である. 機能的近赤外分光法(fNIRS)のようなモーションアーチファクトにあまり敏感ではない携帯技術の最近の出現は, 自由に動く被験者の脳機能の研究を可能にした. 本稿では, 制約のない環境における認知および運動プロセスの神経相関の評価におけるfNIRSの可能性を調べる一連の概念実証実験について説明する. 私たちは, スポーツ(卓球)を練習すること, 楽器(ピアノやバイオリン)を一人または二人で演奏すること, および毎日の活動を何時間も行うこと(すなわち連続的な監視)の実例となる応用を示す. 私たちの結果は異なる実生活設定における脳血行動態変化を監視するためのfNIRSの実現可能性や頑強性に関する以前の研究を拡張する. fNIRS測定の柔軟性と頑強性を示すこれらの予備的な結果は, 応用神経科学の分野における将来の研究に影響を与え貢献すると信じられる.

人対人の言語コミュニケーションに対する交差脳神経メカニズム

A cross-brain neural mechanism for human-to-human verbal communication
J. Hirsch, J. Adam Noah, X. Zhang S. Dravida and Y. Ono
Social cognitive and affective neuroscience, vol. 13, no. 9, pp.907-920, 2018.

動的な社会的相互作用を仲介する神経メカニズムは,その進化の重要性にも関わらず,依然として研究が進んでいない.インタラクティブブレイン仮説は,相互的な社会的合図が専用の脳基盤によって処理されるということを提案しており,社会的相互作用の根底にある神経メカニズムを調査するための一般的な理論的枠組みを提供する.我々は,会話と聞き取りに基づいた社会的相互作用時に標準的な言語領域が脳間で増加し,動的に結合されるというこの仮説の具体的な事例を実験する.自然な環境で相互作用がある場合とない場合でObject NamingタスクとDescriptionタスクを実行し,交互に会話と聞き取りを行なう相手の脳のデオキシヘモグロビン信号を機能的近赤外分光法を用いて同時に取得した.相互的と非相互的条件の比較により,相互作用時に上側頭回を含むウェルニッケ野に関連する神経活動の増加が確認された(P=0.04).ところが,仮説はブローカ野に対しては支持されなかった.上側頭回や中心下領域に由来する信号のウェーブレット分析により定められるクロスブレインコヒーレンスは非相互作用時より相互作用時の方がより大きかった(P<0.01).インタラクティブブレイン仮説の裏付けとして,これらの知見は対人情報を共有する経路に特化した,動的に結合されたクロスブレインの神経メカニズムを示唆する.

アイコンタクト時に脳内および脳をまたいで同期する前頭側頭-頭頂システム

Frontal temporal and parietal systems synchronize within and across brains during live eye-to-eye contact
Hirsch, Joy and Zhang, Xian and Noah, J Adam and Ono, Yumie
Neuroimage, Vol.157, pp.314-330, 2017

機能的脳画像データの本質的に多変量の性質は,解剖学的に異種の脳領域が認知課題時にどのように相互作用 するかを探究する機会を与えている.イベント関連の機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)データを用いて脳領 域間相互作用を特徴付ける新しい手法を示す.本手法の主な利点は,既存の分析技術に比べて認知課題の明確な 段階の間に脳領域間の機能的接続性をモデル化することである.本手法は,一般化線形モデル(GLM)における 個々の試行の各段階で誘発された脳活動をモデル化するために別々の共変量を用いることによって実装されてい る.得られた GLM パラメータ推定値である β 値は,その値が導出された段階に従ってソートされ,段階固有の β 系列のセットを形成する.ある段階で β 系列が相関する領域は,その段階で機能的に相互作用していると推測 される.試行間の β 値の相関変動は機能的接続性を示唆するという仮定を検証するため,タッピングタスクを 2 回行ったイベント関連の fMRI データセットにこの方法を適用した.以前の電気生理学的研究および fMRI のコ ヒーレンス研究と一致して,本研究では二者間のより大きな協調を必要とする課題では 2 つの半球の運動領域間の より強い相関を引き起こすことを見出した.本手法は,被験者が遅延認識課題を行ったイベント関連の fMRI デー タセットにも適用した.この課題の段階では明確な機能的接続マップが生成され,認知課題の各段階でニューラ ルネットワークの重要かつ新規な観察が得られることを示している.

第三者の罰による複数脳の接続性:脳波ハイパースキャニング研究

Multiple-Brain Connectivity During Third Party Punishment: an EEG Hyperscanning Study
A. Ciaramidaro, J. Toppi, C. Casper, C. Freitag, M. Siniatchkin and L. Astolfi Scientific reports, vol. 8, no. 1, p.6822, 2018.

“同情は,他者の苦しみに対する特有の感情的反応であり,苦しみを和らげたいという願望を伴う.この利他的行動は,たとえ見知らぬ人であっても,非難された人の行動にペナルティが課される利他的な罰によって明らかにされる.
我々は,2種類の手法を適用することによって,同情が多面的な社会的行動であり,利他的な罰を予測可能であるという実証的証拠を与えた.特に,脳波ハイパースキャニングによる複数脳の接続性の研究によって,第三者の罰(third-party punishment:TPP)実験におけるリアルタイムな社会的相互作用時の同情を調査した.我々は,個人および対人間の行動および心理的な要因と特有の接続パターンの関係を明らかにした.したがって,本稿の結果は,同時計測および複数脳の接続性に基づく生態学研究が複雑な社会現象の分析に適していることを示唆する.”

競争時の脳:fNIRSを用いたハイパースキャニングによる認知力の向上と脳間カップリング

Brains in Competition: Improved Cognitive Performance and Inter-Brain Coupling by Hyperscanning Paradigm with Functional Near-Infrared Spectroscopy
Balconi, Michela and Vanutelli, Maria E Frontiers in behavioral neuroscience, vol.11, p.163, 2017.

脳のハイパースキャニングは,2人の被験者による競争課題に適用された.機能的近赤外分光法(fNIRS)および認知能力は,共同作業中の被験者(14ペア)間の脳間および認知戦略の類似性によって調査された.我々は,共同作業と競争によって脳間カップリングの増加と認知力の向上が示唆した.被験者の間の直接的な相互作用と観察されるパフォーマンスの外部フィードバック(実験的に誘発された架空のフィードバック)は,エラー率(ER)および応答時間(RT)の低下という認知能力に影響を及ぼすと考えられた.また,fNIRSの測定値(オキシヘモグロビン)は,前のフィードバック条件よりも後のフィードバックの条件において,前頭前皮質(PFC)における脳活動の増加を明らかにした.さらに,課題中の被験者ペアの脳活動の類似性はより高く,前フィードバック条件よりも後フィードバック条件において高かった.最後に,右半球において前頭部の有意な増加が観察された.実際,右のPFCは,後のフィードバック条件において,被験者ペア内で類似する応答性がみられた.共同作業および競合課題は,これらの認知能力の向上,ペア間の脳の同期した応答性のおよび左右機能分化効果(負の感情)を説明した.

社会的リスクのある意思決定はTPJ における男女差を明らかにする:fNIRS を用いたハイパースキャンイング の研究

Social risky decision-making reveals gender differences in the TPJ A hyperscanning study using functional near-infrared spectroscopy
Zhang, M., Liu, T., Pelowski, M., Jia, H., and Yu, D.
Brain and cognition, vol. 119, pp. 54-63, 2017

これまでの神経科学研究では,擬似社会的(主に非対面)の文脈における単一脳のフレームにおけるリスクのある意思決定の神経相関が調査されてきた.より自然な社会的相互作用における行動リスクのある意思決定を完全に理解するため,本研究ではfNIRS ハイパースキャニング技術を使用して,対面式のギャンブルカードゲームにおける参加者ペアの前頭-側頭の活動を同時に測定した.脳内の結果は,男性と女性ともに,mPFC および前頭極領域の下位部分ならびに側頭頭頂接合部(TPJ)において,低いリスクに対して高いリスクの場合により高い活性を示した.これは,意思決定タスクにおけるメンタライジングネットワークの重要性を示唆する以前の知見と一致している.脳間神経同期(INS)のfNIRS の結果は,男性および女性がmPFC およびdlPFC における脳間コヒーレンスの増加することも示唆した.女性に限り左のTPJ において脳間コヒーレンスが増加したことを示した.このINS の結果は,社会的相互作用において危険な決定をするとき,男性は非社会的認知能力に主に依存し,女性は社会的および非社会的認知能力の両方を使用することを示唆している.人間の相互作用と2 者の神経科学の一般的なトピックスについても同様に議論している.

fNIRSを用いたハイパースキャニングにより明らかにされた協力時の神経と行動特性における性差

Sex differences in neural and behavioral signatures of cooperation revealed by fNIRS hyperscanning
J.M. Baker, N. Liu, X. Cui, P. Vrticka, M. Saggar, S.H. Hosseini and A.L. Reiss
Scientific reports, vol. 6, Article 26492, 2016

複数の分野の研究者は性別がどのようにして人間の社会的行動を適度なものにしているのかを理解をしようと努めてきた.50年以上の研究が男性と女性の協力的な行動における違いを明らかにした一方で,これらの性別の違いの根本にある神経的関係は説明されていない.この謎の欠如した基本的な要素は,相互作用する二者の性別の構成が協力時の脳と行動にどのように影響を与えているのかについて理解することである.同性および異性の111組のペアにfNIRSに基づいたハイパースキャニングを用いることで,私たちはコンピュータベースの協力作業に関わる,行動と神経の性別に関連する有意な差異を特定した.少なくとも1人の男性を含むペアは,女性同士のペアよりも有意に高い行動成績を示した.個々の男性と女性は右前頭極と右下前頭皮質において有意な活性を示した.ただし,この活性は男性と比較して女性においてより大きかった.女性同士のペアは右側頭皮質で有意な脳間コヒーレンスを示した一方,男性同士のペアにおける有意なコヒーレンスは右下前頭前皮質で生じた.有意なコヒーレンスは異性のペアではみられなかった.最後に,同性のペアでのみで,タスク関連の脳間コヒーレンスが協力タスクの行動成績と正の相関を示した.私たちの結果は,神経と行動の協力時の同時的特性に関して複数の重要かつ以前見つかっていなかった性別の影響を強調する.

同時近赤外分光法により測定された協調作業中の2 人のprefrontal cortices の同期活動

Synchronous activity of two people ’s prefrontal cortices during a cooperative task measured by simultaneous near-infrared spectroscopy
Journal of biomedical optics, vol.16, no.7, pp. 077011, 2011
20170902 mmizuno
社会過程の一つである協力中の脳活動を検討した.我々は,複数の参加者の同時に起きる脳活動とその協調作 業のパフォーマンスとの関係を調査した.2 人の参加者の脳活動を同時に測定するために,wearable near-infrared spectroscopy (NIRS) システムが用いられた.参加者の各ペアは協調作業を行い,NIRS システムにより脳血流量 の相対的変化を測定するする.タスクとして,聴覚的な合図の後,参加者は心の中で10 秒を数え,ボタンを押す よう指示された.また,ボタンを押すタイミングを調整してできるだけ同期させるように指示された.各参加者の 2 つのボタンプレスと参加者のどちらが速いかの情報,すなわち「intertime interval」は,各試行後にビープ音に よって参加者にフィードバックされる. 各参加者のprefrontal cortices の活性パターン間の時空間共分散が高い場合,それらのボタンプレス時間の間の 時間間隔はより短かった. この結果は,2 人の参加者の脳の同期化された活性パターンが,協調作業において相互作用するときのパフォー マンスと関連していることを示唆している.