機能的コネクトームの確率的閾値処理:統合失調症への応用

Probabilistic thresholding of functional connectomes: application to schizophrenia
F. Vasa, E.T. Bullmore and A.X. Patel
NeuroImage, 2017.
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機能的なコネクトームは,一般に,領域の神経生理学的信号間の相互相関を閾値処理することで構築されたスパースなグラフとして解析される.閾値処理は,一般に,与えられた絶対値の重みを超えるエッジを保持することによって,または,エッジ密度を制約することによって最も強いエッジ(相関)を保持する.後者の(より広く使用される)方法は,高いエッジ密度による偽陽性のエッジの包含,および低いエッジ密度による陽性のエッジの排除のリスクがある.本稿では,統合失調症患者71名と健常者の対象群56名のresting-stateにおけるfMRI計測データセットに対し,第一種過誤(偽陽性)に対して制御された確率的閾値付きグラフの構築を可能にする新しいウェーブレットベースの方法を適用する.コネクトームを固定されたエッジ特異的P値に閾値処理することにより,統合失調症患者の機能的コネクトームは健常者の機能的コネクトームよりも断続的であり,低いエッジ密度および多くの非連結成分を示した.さらに,多くの被験者のコネクトームは,第一種過誤を制御しながら,文献で一般的に研究されている固定エッジ密度(5~30\%)まで構築できなかった.また,以前に統合失調症研究で報告されたトポロジーランダム化は,コネクトームを相関に基づいて固定密度に閾値処理するときに含まれていた「有意でない」エッジに起因する可能性が高いことが示唆された.最後に,P値を増加させることによって閾値化されたコネクトームを明示的に比較し,相関を減少させることによって,確率的に閾値化されたコネクトームはランダム性の減少および被験者間の一貫性の増加を示す.我々の結果は,グラフ理論を用いた機能的コネクトームの将来の解析,特にエッジ重み(相関)の異種分布を示すデータセット内,グループ間または被験者間の関係に影響を及ぼす.

機能的ネットワークのモジュラリティによる個人間と個人内のワーキングメモリ容量の変動の予測

Functional Brain Network Modularity Captures Inter- and Intra- Individual Variation in Working Memory Capacity
PLoS ONE, Vol.7, No.1, e30468
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背景:ワーキングメモリのような認知機能は人によって異なる.しかしながら,個々の認知パフォーマンスも日によって変化する.認知可変性の一つの原因は神経システムの機能的組織における変動かもしれない.最適化された機能的ネットワークの組織の度合いは,個々の効果的な認知機能に関連している可能性がある.本論文では,レスティングステイトfMRIによって計測されたラージスケールネットワークの組織がどのように変化するか,そしてグラフ理論追跡はワーキングメモリ容量を変化するのかを検討する.
手法と結果:22名の被験者はワーキングメモリ容量を計測し,レスティングステイトfMRIを行った.17名は同じ実験を3週間後に行った.34の脳領域においてネットワーク組織を計測するため,グラフ理論を用いた.サブネットワークの統合性と分離性の度合いを示すネットワークモジュラリティとネットワーク結合の効率性を示すスモールワールド性は,個人の記憶容量の違いを予測した.しかしながら,モジュラリティのみ2セッション間の個人内の変動を予測した.セッション間で安定しているワーキングメモリのコンポーネントを制御する偏相関係数分析は,モジュラリティが各セッションのワーキングメモリの変動性とよく関連していたことを明らかにした.特定のサブネットワークと個人の回路の解析は,ワーキングメモリの変動性を明確に説明することはできなかった.
結論:レストで計測された認知制御ネットワークとして定義された機能的組織は,実際の認知パフォーマンスについての情報を反映していることを結果は示している.個人のワーキングメモリ容量の変動性に対するネットワークモジュラリティの関連性は,信号の調整あるいはノイズ伝達の抑制を通して,モジュール内の高い結合とモジュール間の疎な結合が脳領域間の効果的な信号伝達を反映する可能性があることを示している.

ヒューマンコネークトームのリッチクラブ組織

Rich-Club Organization of the Human Connectome
The Journal of Neuroscience, vol.31, no.44, pp.15775–15786, 2011
ヒトの脳は結合された領域の複雑なネットワークである.近年の研究は,異なった領域間のネットワークの間のグローバルな情報統合において重要な役割を担う領域である,密に結合され,高い中心性をもつ新皮質のハブ領域の存在を示している.これらのハブ領域の潜在的で機能的な重要性は,これらの構造および機能的なコネクティビティの外形の障害が神経病理学と結びついていると示している近年の研究により強調される.本研究は脳の皮質下と新皮質の両方を図示し,特にそれらの構造的リンクにおいて,それらの相互関係を調査する.ここでは,脳ハブがいわゆるリッチクラブを形成し,次数の大きいノードが次数の低いノードよりもそれら自身でより結合している傾向によって特徴付けられ,脳ネットワークの高次なトポロジーにおける重要な情報を提供することを示す.21人の被験者の全脳の構造的ネットワークは拡散テンソルデータを用いて再現される.これらのネットワークのコネクティビティプロファイルの調査は12の強く相互接続された両側半球のハブ領域を明らかにし,皮質下の海馬,被殻,および視床だけでなく,楔前部とより上前頭,およびより上頭頂皮質から成っていた.重要なことに,これらのハブ領域は,次数のみに基づいて予測されるものより,密に相互接続され,リッチクラブを形成する.本稿では,特に情報の統合と構造的コアへの協議ロバストネスの役割について,ヒューマンコネクトームのリッチクラブ組織の潜在的で機能的な意味を議論する.

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拡散テンソルトラクトグラフィーを用いた大脳皮質の構造的結合パターンのマッピング

Mapping Anatomical Connectivity Patterns of Human Cerebral Cortex Using In Vivo Diffusion Tensor Imaging Tractography
Cerebral Cortex, vol.19, no.3, pp.524-536, June 2008

脳の構造的・機能的組織の基礎となる,複雑ネットワークのトポロジカルな構造の特徴はニューロサイエンスにおいて重要な問題である.しかしながら,ヒトの脳の構造的結合のネットワークに関する証拠はまだ十分にない.本論文では,多くの被験者(80被験者)における,ヒトの皮質の一般的な結合パターンの基礎となる,マクロスケールの構造ネットワークを形成するため,我々は拡散テンソル画像法による決定論的トラクトグラフィーをもちいた.そして,さらなる量的解析はグラフ理論を用いて行った.大脳皮質は78の皮質領域にわけられ,それぞれをネットワークのノードとし,神経結合の可能性が統計的基準を満たしていた場合,2つの皮質領域はつながっていると考えた.確立された皮質ネットワークのトポロジカルパラメータは,べき乗分布指数的に特徴付けられたスモールワールドと類似している.これらの特徴は集中したダメージに対する高い回復を意味する.さらに,この皮質ネットワークは白質路の結合による,関連皮質における主要なハブ領域によって特徴づけられる.我々の結果は構造的・機能的脳内ネットワークの先行研究と互換性があり,機能的状態の基礎となるヒトの脳の構造的ネットワークの組織の原理に関する見識を与える.

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