レスティングステイトの脳ネットワークの機能的統合は,ワーキングメモリパフォーマンスの特定されていな いバイオマーカーであるか?

Is functional integration of resting state brain networks an unspecic biomarker for working memory performance?
M. Alavash, P. Doebler, H. Holling, C.M. Thiel and C. Gieing Neuroimage, Vol.108, 182-193, 2015
2017115 rhagiwara

“私たちの認知能力が利益をもたらす機能的な脳ネットワークの最適なトポロジーはあるか?以前の研究は,レスティングステイトの脳ネットワークの機能的統合は,認知能力のための重要なバイオマーカーであることを示唆している.しかしながら,より高いネットワーク統合が,良好な認知能力のための特異的な予測因子であるか,あるいはレスト中の特定のネットワーク構成が特定の認知能力のみを予測するかどうかは未だに不明である.
ここでは,安静時のネットワーク統合と認知能力との関係を,ワーキングメモリの異なる側面を測定した2 つのタスクを用いて調査した.1 つのタスクは視覚空間,他は数値ワーキングメモリを評価した.ネットワーククラスタリング,モジュール性,および効率性を,ネットワーク構成の様々なレベルでネットワーク統合を取得し,各ワーキングメモリテストでのパフォーマンスとの相関を統計的に比較するために計算した.
結果は,各ワーキングメモリの局面が異なるレスティングステイトのトポロジーから利益を得ていることを示し,テストはネットワーク統合の各測定値と著しく異なる相関を示した.グローバルなネットワーク統合とモジュール性が高いほど視覚空間ワーキングメモリのパフォーマンスが大幅に向上すると予測されていたが,両方の測定値が数値ワーキングメモリのパフォーマンスと有意な相関を示さなかった.対照的に,数値ワーキングメモリは,クラスタリングされた脳ネットワークを有する被験者,主としてワーキングメモリネットワークの核心領域である頭頂間溝で優れていた.
我々の発見は,レスティングステイトの脳ネットワークの局所的機能統合と全体的機能統合との間の特定のバランスが,認知能力の特別な側面を容易にすることを示唆している.ワーキングメモリのコンテキストでは,視覚的空間性は,グローバルに統合された機能的レスティングステイトの脳ネットワークによって促進されるが,数値ワーキングメモリは,特にワーキングメモリ性能に関与する脳領域における局所処理能力の増加から利益を得る.”

個人における皮質機能ネットワークの分割

Parcellating Cortical Functional Networks in Individuals
Danhong Wang, Randy L Buckner, Michael D Fox
Nature Neuroscience, Volume 18, Pages 1853-1860
20171106knakamura

個人の脳の機能的アーキテクチャを解明するということは,個人の医学における重要なステップであり,人間の認知および行動の変化における神経基盤の解明に寄与する.本研究では,静止状態のfMRIデータを用いて個人のレベルで機能的に組織を正確にマッピングするための新しい皮質分割法を開発した.個々の被験者における脳機能ネットワークの反復的検索を行うために,集団ベースの機能アトラスと個人の変動性のマップを使用した.このアプローチによってマッピングされた機能アトラスは,被験者内において再現性が高く,また,被験者間の変動性を効果的に反映する.このアルゴリズムは,タスクfMRIを含む異なる被験者集団およびデータタイプにわたって良好に機能した.このアプローチは,外科的患者の侵襲性の皮質刺激の臨床応用における大きな可能性が存在することを示唆する.

休止状態のfMRIデータを用いた集団の全脳のスーパーボクセルに基づく分割方法

A Supervoxel-Based Method for Groupwise Whole Brain Parcellation with Resting-State fMRI Data
Frontiers in Human Neuroscience 10 (2016)
20170424knakamura

ノードの定義は,人間の脳のネットワーク解析および機能的接続研究において非常に重要な問題である.通常,meta-analysis,ランダムな基準,および構造的な基準から生成されたアトラスは,ネットワーク解析に関連するアプリケーションのノードとして利用されます.しかし,これらのアトラスはもともとそのような目的のために設計されておらず,ネットワーク解析のような目的に対して適切ではないことがある.この研究では,適切な脳アトラスを生成するために全脳静止状態のfMRIデータを分割するために、Normalized Cut(Ncut)およびSimple Linear Iterative Clustring(SLIC)と呼ばれるスーパーボクセル法を組み合わせた.具体的には,接続行列から特徴を抽出するためにNcutを用い,抽出された特徴にSLICを適用して分割を生成した.グループレベルの分割を得るために,平均SLICと2レベルSLICという2つのアプローチを提案する.複数のサイズのスーパーボクセルを生成するために広い範囲でクラスタ数を設定した.2つのSLICアプローチを,空間的連続性,機能的均質性および再現性を含む異なる評価基準の下で3つの最先端アプローチと比較した.我々の研究では,群間再現性および群間再現性の両方を評価した.実験結果では,提案されたアプローチが,異なる重み付け関数,異なるスパース化スキーム,およびいくつかの要因を含む異なる条件において比較的良好なクラスタリング性能を得たことが示された.従って,生成されたアトラスは,ネットワーク解析のためのノードとして利用するのに適している.この研究の生成されたアトラスと主要なソースコードはhttp://www.nitrc.org/projects/slic/で公開されています.

簡易なメンタルトレーニングによる大規模な脳内ネットワークの再構成

Brief Mental Training Reorganizes Large-Scale Brain Networks
Frontiers in System Neuroscience, vol.11, 2017

20170422tmiyoshi

先行研究では,メンタルトレーニングの一種の形態であるマインドフルネス瞑想が,脳の活動や構造的な接続性の変化によって,注意力や感情調節,認知能力を向上させることを示している.
しかし,短期的なマインドフルネス瞑想が大規模な脳内ネットワークを変えるかどうか,またどのように変化させるのかは十分に理解されていない.
本稿では,IBMT(Integrative body-mind training)と言われる簡易なマインドフルネス訓練による脳活動パターンや神経メカニズムの変化を特定するために,rsfMRI(resting-state fMRI)データに対して多変量パターン解析(Multivariate pattern analysis:MVPA)を適用した.
全脳のrsfMRIは1セッション30分でIBMTを2週間受けた学部生グループに対して行った.
分類指標はこのfMRIデータの機能的接続性の尺度を学習し,IBMT訓練の前後の接続パターンを72\%の確率で識別できた.
訓練後,主に両側上/中後頭部回,両側前頭部弁蓋,両側上側頭回,右側頭極,両側島,尾状核および小脳において正の機能的な接続(60の接続)の増加が見られた.
これらの結果は,簡易なメンタルトレーニングが,注意,認知および感情処理,気づきおよび感覚統合,報酬処理を支援する神経回路の一部を含む可能性のある安静時の大規模な脳内ネットワークの機能的接続性を変化させることを示唆した.

レスティングステイト fMRI の有向グラフ測定を用いた健常者対象からの MCI および AD 患者の分類

Classification of patients with MCI and AD from healthy controls using directed graph measures of resting-state fMRI
Behavioural Brain Research, 2016
20161119 rhagiwara

アルツハイマー病(AD)患者の脳内ネットワーク変化は多くの研究の対象となっているが,これらの変化の根 底にある生物学的メカニズムはあまり理解されていないままである.ここで,AD と経度認知障害(MCI)患者 の脳内ネットワークの変化を特定し,グラフ理論アプローチと高度機械学習方法を利用して,健常の対照被験者 (HC)からこれらの患者を分類するための正確なアルゴリズムを提供することを目的とする.多変量グレンジャー 因果関係分析は,様々な有向グラフ測定を計算し,34 の HD,89 の MCI,および 45 の HC のレスティングステ イトの機能的核磁気共鳴画像法(rs-fMRI)データに対して実施された.グラフ測定は,機械学習アルゴリズムに 対して元の特徴セットとして使用された.フィルターとラッパーの特徴選択方法は,元の特徴セットに適用して, 特徴の最適なサブセットを選択した.最適な特徴とナイーブベイズ分類器を用いて,AD,MCI,および HC の分 類に関して 93.3% の精度が達成された.また,ハブノード解析を行ったところ,HC,MCI,AD のハブ数はそれ ぞれ 12,10,および 9 であることがわかり,AD 患者は AD の進行として脳内ネットワークにおける重要な伝達 領域の障害を経験していることが示唆された.この研究の所見は,MCI および AD の根底にある神経生理学的機 構についての洞察を提供する.提案された分類方法は,AD の初期段階の同定のための rs-fMRI データの有向グラ フ測定の可能性を強調する

機能的ネットワークのモジュラリティによる個人間と個人内のワーキングメモリ容量の変動の予測

Functional Brain Network Modularity Captures Inter- and Intra- Individual Variation in Working Memory Capacity
PLoS ONE, Vol.7, No.1, e30468
20151029sobuchi

背景:ワーキングメモリのような認知機能は人によって異なる.しかしながら,個々の認知パフォーマンスも日によって変化する.認知可変性の一つの原因は神経システムの機能的組織における変動かもしれない.最適化された機能的ネットワークの組織の度合いは,個々の効果的な認知機能に関連している可能性がある.本論文では,レスティングステイトfMRIによって計測されたラージスケールネットワークの組織がどのように変化するか,そしてグラフ理論追跡はワーキングメモリ容量を変化するのかを検討する.
手法と結果:22名の被験者はワーキングメモリ容量を計測し,レスティングステイトfMRIを行った.17名は同じ実験を3週間後に行った.34の脳領域においてネットワーク組織を計測するため,グラフ理論を用いた.サブネットワークの統合性と分離性の度合いを示すネットワークモジュラリティとネットワーク結合の効率性を示すスモールワールド性は,個人の記憶容量の違いを予測した.しかしながら,モジュラリティのみ2セッション間の個人内の変動を予測した.セッション間で安定しているワーキングメモリのコンポーネントを制御する偏相関係数分析は,モジュラリティが各セッションのワーキングメモリの変動性とよく関連していたことを明らかにした.特定のサブネットワークと個人の回路の解析は,ワーキングメモリの変動性を明確に説明することはできなかった.
結論:レストで計測された認知制御ネットワークとして定義された機能的組織は,実際の認知パフォーマンスについての情報を反映していることを結果は示している.個人のワーキングメモリ容量の変動性に対するネットワークモジュラリティの関連性は,信号の調整あるいはノイズ伝達の抑制を通して,モジュール内の高い結合とモジュール間の疎な結合が脳領域間の効果的な信号伝達を反映する可能性があることを示している.

脳ネットワークの調査:レスティングステイトfMRI の機能的結合に関する総説

Exploring the brain network: A review on resting-state fMRI functional connectivity

我々の脳はネットワークである.脳は空間的に区分された構造で成り立っているが,お互いに連続的に情報の共有をする領域間で機能的に結合している.興味深いことに,近年の脳機能イメージングデータ解析の発展によって,脳の機能的結合の調査が促進している.機能的結合は構造的に解離している領域の神経活動パターンの時間的依存と定義され,脳領域間のレスティングステイトfMRIにおける協調した活動のレベルを計測することによって機能的結合の研究が増加してきた.これらの先行研究によって,特定領域と局所ネットワークの機能的結合についてや脳ネットワークにおける機能的連絡の全体的な構成についての新たな知見が発見された.本稿では,新たな解析手法の紹介とこれらのイメージング技術の概要を提示しながら,人間の脳のコアとなる新たな見識がどのように導かれたのかを議論する.どのように脳ネットワークの機能的結合と構造的結合が関係するのか,どのように機能的連絡が認知パフォーマンスのキーを形成するのかについて決定する,無意識的なレスティングステイトfMRIの方法についてに記す.また,機能的脳ネットワークの全体的な構成に焦点をあてたグラフ理論を用いた機能的結合パターンの解析について論じる.特に,アルツハイマー病や認知症,統合失調症,多発性硬化症のような機能結合による新たな指標について記す.

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